材質:SWP-A(SWRS)
線径:4.3mm
コイル平均径:14.2mm
- セッチング前後で自由高さが変化するのでそれを見越して設計
こちらの逸品は、D/d≒3.3であり、自動機での加工があまり推奨ではないところもポイントですが、要求される応力が高く、ヘタリを軽減するためにセッチングを行ったというところが今回紹介したいトピックスとなる圧縮バネです。
セッチングとは?
セッチングとはいわゆる「塑性加工」です。ばね成形後、極めて高い応力をばねに対して負荷することで、負荷された方向と逆方向への残留応力が形成されるため、疲労強度が向上しヘタリに対して強くなるという原理です。(※許容応力そのものが増えるわけではありません)
注意点として、セッチングによってばねが塑性変形を起こすため、セッチング後はもとのばねの自由高さが低くなりますので、それを見越して設計する必要があります。(※故に、自由高さの公差が厳しい場合はセッチングは推奨されません)
こちらの逸品では要求応力の高さから、セッチングを行うことでヘタリに対して強くなるように設計いたしました。
余談:高寿命化には、ショットピーニングという手段も一般的です
今回の逸品とは直接関係ないのですが、ばねの高寿命化にはショットピーニングという手段も広く知られています。
ショットピーニングはばねの表面に無数の細かな衝撃を与えることで,表面に圧縮の残留応力を発生させる加工になります。物理的な原理としてはセッチングと似ていて、表面層に付与された圧縮の残留応力によって疲労強度を向上させることが出来ます。
セッチングは主に圧縮バネのヘタリ対策ですが、ショットピーニングは引っ張りバネに対しても有効な場合があります。ただし注意点として表面に細かな傷がつくため、耐食性を損ねる場合があるため、使用環境や用途と要相談になります。
ちなみにセッチングもショットピーニングも「高精度のばね」や「線径が細い」といった場合には不向きですので、どちらかと言えばもっと線径が太く、高い応力を実現する大型ばねの領域でよく用いられる手段とは思いますが、弊社も選択肢の一つとして実施は可能ですので、そういったケースがあればご提案させていただきます。
岩津発条では、加工だけでなく、仕様設計に関するご提案もさせていただきます。難加工の設計に関するご相談はお気軽に!