普通、ロット数を増やせば単価は安くなると思いますが、見積をいただいたところロットが増えても単価が安くなっていませんでした。
ばねはボリュームディスカウントが適応されないのでしょうか。
製造業の世界では「大ロットの場合の1部品あたりの単価は小ロットの単価よりも安くなる」というのが当たり前で、これをボリュームディスカウントと言ったりもします。
ですが、難加工のばねにおいてはそのボリュームディスカウントが適応される場合とそうでない場合があります。まず、加工費用(価格)に関する基本的な考え方をご説明しますと、
加工費用=材料・設備セット費用(どのような加工でもほぼ一定費用)+加工時間(1セットで加工できる数量×加工時間)+材料費(製品数)+必要に応じて(治具や型作成費材料+めっき等の後加工)
となります。ボリュームディスカウントのポイントは1セットあたりでどれだけ加工できるか、という点になります。実際にはもう少し要素が加わることが多いですが、要点をわかりやすくするためにシンプルな具体例を挙げさせていただきます。
例えば、1回自動機に材料をセットして製品が10000個分作れる場合を想定しましょう。
仮に「セット費用=1000円、1製品あたり時間単価=1円、材料費=1円」とすると、500個作った場合の1製品あたりの単価は、(1000+500+500)/500=4円、1000個作った場合は(1000+1000+1000)/1000=3円、10000個作った場合は(1000+10000+10000)/10000=2.1円
と、それぞれ数を増やした分だけ1製品あたりの単価は下がります。要は、固定となるセット費用を数量で割ることによって単価が下がっている、というカラクリです。繰り返しになりますが、重要なポイントは「1セットでどれだけの数を加工できるのか」という点になります。
この例でいきますと、1セットあたり10000個の加工ができるので、仮に20000個作ろうと思うと2セット必要になるため、10000個と20000個では実は加工単価は同じになります。ボリュームディスカウントは効いていません。
しかし実際にはこの数量ですと、時間単価により十分な利益が出ていると予想できるため、出精値引きを入れたりすることが多いので、単純に発注数を増やせば単価が下がるという公式が成り立っているケースが殆どでしょうか。
しかしここからが重要なポイント。1セットあたり1つしか出来ない場合はどうでしょうか。
先ほどの例は「自動機」を使える例や、専用治具で半自動化が行える場合に当てはまりますが、1つずつ手加工の場合は1セットで1つの製品しかできません。つまり、数を増やしてもボリュームディスカウントは効かず、かつ時間単価による利益もほぼ人件費になるため、出精値引きも出来ない状態です。
試作段階ではこのようなケースでも問題ない場合が多いですが、量産となると問題になるケースが殆ど(生産量も含めて)ですので、それを防ぐために、例えば、少々初期費用がかかりますが、専用治具や型を作って自動化できる仕組みを整えておくと、長期目線でボリュームディスカウントが効いて、トータルコストが下がるケースもあります。
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